1.遺産分割の対象となる財産
■対象となるもの
土地、建物、事業(農業)用財産、有価証券、現金預貯金等、家庭用財産、立木、自家用車、貴金属、貸付金など
■対象とならないもの
みなし相続財産(生命保険金等)、生前に被相続人から相続時精算課税に係る贈与によって取得した財産、相続開始3年以内に被相続人から贈与を受けた財産など
2.遺産分割協議で留意すること
(1)遺言書で相続する財産が定められている時は、遺言書に従う。
(2)遺言書がない時は、相続人の協議により誰が何を相続するか決めていきます。
(3)相続人に未成年者がいる場合には、家庭裁判所に特別代理人の申し立てをします。
(4)被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人は、その寄与分を請求することができます。
(5)相続人全員による遺産分割協議により、法定相続分によらない分割が可能です。
(6)遺産分割協議が不成立や協議することができない場合は、家庭裁判所の調停や審判を受けます。審判の結果に納得できない場合は、一定期間内に即時抗告することとなります。
3.遺産分割のポイント
(1)相続財産を相続人間でどのように分けるか
遺産分割が成立しないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等についての課税の特例」等を適用することができないため、相続税を多く支払うこととなります。
また、不動産の名義変更や預貯金等の解約手続きができないなど多くのことに支障をきたすこととなるため、相続財産をどのように分割するかはとても重要なポイントです。
(2)納税資金を考慮しているか
相続した財産の大半が不動産で相続税を支払うだけの預貯金等を相続しなかった場合は、納税のために自己の預貯金等の解約や相続した不動産の処分を考えなければなりません。できるだけこのような状況を避けるために相続する財産を一人一人詳細に検討する必要があります。
(3)二次相続を考慮しているか
遺産分割は、一次相続と二次相続をトータルで考えて決定しなければなりません。一次相続で配偶者は「配偶者の税額軽減」を考慮してどれだけ取得するか、小規模宅地等の特例となる土地等や収益物件を誰が相続するかなど十分に検討する必要があります。
(4)事業の円滑な承継は考慮しているか
自社株は会社を経営していく上での大切な財産なので、円滑に承継するためには後継者に株を集中するのが望ましいです。
4.遺産分割の実行
(1)現物分割
遺産を現物のまま分割する方法で、分割の原則的方法です。
(2)代償分割
共同相続人の1人又は数人が遺産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人に対して債務を負担する(金銭を支払う)分割の方法です。
(3)換価分割
共同相続人の1人又は数人が相続により取得した財産の全部又は一部を売却する等の方法で換価し、その換価代金を分割する方法です。
5.遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で相続人全員の同意を得られたら、すぐに遺産分割協議書の作成に入ります。この遺産分割協議書に相続人全員が自署して印鑑登録を受けた印鑑で押印します。相続人が未成年者の場合は家庭裁判所の選任を受けた特別代理人が自署、押印することとなります。