相続時精算課税制度とは、贈与した年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母から、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の推定相続人である子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる制度です。相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択した年以降、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。贈与税額は贈与財産価額の合計額から特別控除額(限度額2500万円ですが、前年以前の贈与において、既にこの特別控除をしている場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出します。なお、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除して贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の価額)と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。その際、相続税から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
(注)相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできないので、贈与財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。
FAQ
「地積規模の大きな宅地の評価」とは?
平成29年9月の財産評価基本通達の一部改正により、「地積規模の大きな宅地の評価」(評価通達20-2)が新設されました。これにより、平成30年1月1日以降に相続、遺贈又は贈与により取得する宅地で、一定の要件を満たすものは、上記通達の定めを適用して評価することとなります。なお、この改正に伴い、広大地の評価(改正前の評価通達24-4)は廃止されました。
Ⅰ.「地積規模の大きな宅地の評価」の概要
「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地(下記Ⅱの1)は、路線価に奥行価格補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率(下記Ⅱの4)を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。(注1、2)
評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率など×規模格差補正率×地積の各種画地補正率
(注)1 倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地(下記Ⅱの1)については、次に 掲げる①の価額と②の価額のいずれか低い価額により評価します。
① その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
② その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率(下記Ⅱの4)を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
(注)2 市街地農地等(市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野)については、その市街地農地等が宅地であるとした場合に「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地(下記Ⅱの1)に該当するときは、「その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」について「地積規模の大きな宅地の評価」の定めを適用して評価します。
Ⅱ.「地積規模の大きな宅地の評価」の内容
1 「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地 |
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「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域においては、下記2のうち、普通商業・併用地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。 また、倍率地域においては、下記2のものとなります。 |
2 地積規模の大きな宅地 |
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地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいい、下記3に該当するものを除きます。 |
3 地積規模の大きな宅地から除かれるもの |
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次の⑴から⑷のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除かれます。 ⑴ 市街化調整区域(都市計画法第34第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)に所在する宅地 ⑵ 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地 ⑶ 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地 ⑷ 評価通達22-2に定める大規模工場用地 |
4 規模格差補正率 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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規模格差補正率は、次の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨てます)。
上記算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。 ⑴三大都市圏に所在する宅地(注)
⑵三大都市圏以外の地域に所在する宅地
(注)三大都市圏とは、次の地域をいいます。 |
非上場株式に係る事業承継税制とは?
事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、これまでの措置(以下「一般措置」といいます。)に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置(以下「特例措置」といいます。)が創設されました。
(参考)特例措置と一般措置の比較
特例措置 | 一般措置 | |
事前の計画策定等 | 5年以内の特例承継計画の提出 (平成30年4月1日から平成35年3月31日まで) |
不要 |
適用期限 | 10年以内の贈与・相続等 (平成30年1月1日から平成39年12月31日まで) |
なし |
対象株式 | 全株式 | 総株式数の最大3分の2まで |
納税猶予割合 | 100% | 贈与:100% 相続:80% |
承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
雇用確保要件 | 弾力化 (承継後5年間平均8割の雇用を下回った場合には県への報告が必要) |
承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 | あり | なし |
相続時精算課税制度の適用 | 60歳以上の者から20歳以上の者への贈与 | 60歳以上の者から20歳以上の推定相続人・孫への贈与 |